2015年12月15日火曜日

香港のスタートアップ紹介 : Boxful, GoGoVan

今年の9月から、香港に移住しています。東京と同じく大都市なので、生活において何かが大きく変わるといったことはないですが、私が今まで感じた香港の特徴としては、

- Expat(国を出て香港で暮らしている外国人)だらけで、人々がオープンで実用的
- 極端な資本主義社会で、安いものと高いものの差がすごい
- 家賃が非常に高く、住宅事情が良くない
- 狭い地域にお店など密集しているので、何かと便利

といったものがあります。産業としては昔ながら金融まわりや飲食業や観光などのサービス業が進んでいますが、新しいアイデアで勝負を試みるスタートアップの熱気も東京に負けないくらいです。興味深いのは、香港特有の問題の解決に取り組んでいるサービスもいくつかあってある程度成功をおさめているということです。今日は香港らしい、香港発の、注目すべきスタートアップの紹介をしてみたいと思います。

すごーく古いビルの隣にすごーく新しいビル
新しいビルでも収益性が低いと判断されたら容赦なく取り壊されます

その前に、香港は異常なくらいみんながWhatsAppに依存しているということを話さないといけません。最初の一ヶ月間、サービスアパートメントと言われる、ホテルのようにクリーニングなどのサービスが含まれる契約型のマンションに住んでいましたが、そこでクリーニングを担当している人が、「掃除が必要な日はWhatsAppでメッセージください」というので、とてもびっくりしました。日本だと、LINEで繋がるというのは友達や知り合いが多くて、例えば駅前のクリーニングやさんにLINEでメッセージ入れるという感覚は私にはなかったので、えーこれはなんか変だな、と驚いたものです。

食べ物のデリバリー頼むのも、引っ越し先探すのも、インターネット会社と連絡するのも、テレビ買うのも、オーブン買うのも、全部WhatsAppで。

WhatsAppは香港では立派なプラットフォームとして成り立っていて、インターネットのサービスがWhatsAppありきでできていることも多々あります。例えば、家電の価格比較サイトの場合、売り手と買い手をマッチングさせて、ポップアップかなんかで「あとはWhatsAppで勝手に連絡しあってください〜」みたいなことになります。それくらいWhatsAppは個人からスモールビジネス、大企業に至るまで、みんなが活用しているということを念頭において、次のサービスについて知ってみると面白いと思います。

1. Boxful


もっとも目立つスタートアップとして、Boxfulというものがあります。家が狭く、家賃が高い香港の住宅事情を踏まえて、当分は要らないものを預かってくれる収納サービスです。もっとも目立つというのは、各種プロモーションが活発に行われていて、地下鉄で宣伝のポスターが貼られていたり、繁華街のど真ん中で着ぐるみがプロモーションを頑張っていたり、あとはタクシーにもBoxfulの広告が貼られていたりします。

Causeway Bayで頑張るBoxfulくん?

私も使ってみました。冬の洋服としばしのお別れ〜。

ネットでボックス持ってきてほしいと申し込むと、指定した日時にデリバリーの人がボックスを持ってきてくれるので、その場で荷物を詰め込めばオッケーです。預けたボックスはネット上で今どんな状況なのか見ることができたり、あと必要に応じて自宅まで持ってきてくれるように申し込んだりすることができます。ボックス一つ預けるのに香港ドル49(およそ770円)がかかり、ボックスに入らないものでも違う値段で預かってくれます。

2015年6月のニュースによると、Boxfulは6.6milアメリカドル(8億円弱)を調達していて、秋や冬にかけて積極的にプロモーション中です。たくさんのユーザーを集めて成功をおさめるのか、それともさまざまな逆境に立ち向かうことになるのかは、これから徐々に明らかになることと思います。



GoGoVanはVanバージョンUberと説明するとわかりやすいと思います。アプリ上で、あれこれ条件をつけてバンを探すと、条件にあったバンが指定した場所まで走ってきてくれるサービスです。Uberよりはいろんな使い方ができると感じていて、例えば荷物が多いときにそれを運ぶためにバンを呼んだり、ちょっとした引っ越しのときに活用したりすることができます。私もいろんな引っ越し会社に問い合わせてみた結果、結局はGoGoVanを使って引っ越しました。GoGoVanもバンを提供する人と、バンを使いたい人を繋げてはくれるんですが、その後の実際の交渉はほとんどWhatsAppで行われます。私の場合、元の家は6階で、エレベーターがなかったので、荷物を階段で運ぶためにいくつかお金を多く払わないといけなくて、その交渉を全てWhatsAppで行いました。

GoGoVanの便利さはどんなわがままな条件を入力しても、それの応じる準備ができている人がたくさんいて、すぐバンで走ってきてくれそうな人と連絡がつくという点です。GoGoVanは2013年にローンチして以来、すでに100milアメリカドル(120億円)以上を調達しています。香港の中ではすでに知れ渡っていて、知人と話してて、「それは重いからさ、GoGoVan呼んで運ぼう」みたいな会話が頻繁に行われるくらいです。GoGoVanは、狭い地域で人口が密集している香港の利点を活かしながら、体系的な配達サービスが存在せず、ものを運ぶことが大変である、という香港の問題を解決しようとしたことで今までは成功をおさめています。

まとめ

香港でのアプリやサービスの使い方や、流行ってるものなどを目の当たりにして、社会やその環境が変わるとウケるアプリやサービスも違うものだな、と「ある社会の実態に特化したサービスを開発することは良い戦略なのか?」「香港の事情にあったこのようなスタートアップが、市場を広げるためにしないといけないことは?」「良いローカライゼーションとは何か?」などについて、いろいろ考えてみるきっかけになりました。

みんなが新しいもの好きで、移り変わりが激しい香港で、どのようなサービスが生き残り、どのようなサービスが淘汰されるのか、これからも興味を持って見守っていきたいと思います。

*UX Tokyo Advent Calendar 2015のためのポストです。